私は図書館や図書室が好きです。
まだ字が読めない幼い頃は祖母が布団の中でよく物語をかたり聞かせてくれました。
レパートリーはそれほど多くはなかったけど何回聴いても面白かったのを覚えています。
小学生の頃は身体を動かすのも好きだったので、休み時間には外でドッチボールをよくしていました。でも図書室は大好きでした。読みたい本がたくさんあってそこに居るだけでも気分が良かったです。本好きの友達も多く競うように読んでいました。
本の裏表紙の図書カードに友達の名前があると、なにか嬉しいような、気持ちを共有しているようなそんな秘密めいたものが図書カードにはありました。
そんなことがあったせいか、住居が変わってもその地域の図書館・図書室にはよく足をはこびます。私にとってはとても落ち着く場所、心が静かになれる場所です。
今回ご紹介するのは恩田陸さんの『図書室の海』です。
恩田陸さんのデビュー作「六番目の小夜子」の外伝にあたりますが、本書を読まなくても十分楽しめます。
『図書室の海』 恩田陸
図書室の海(六番目の小夜子の番外編)・睡蓮(麦の穂に沈む果実の番外編)・ピクニックの準備(夜のピクニックの全日譚)など全10話を収録
高校の図書室が舞台の短編小説です。学生時代、図書室・図書館が好きだった方・恩田ワールド初心者の方におすすめです。
<登場人物>
関根夏……硬式テニス部。手のかからない子供時代を過ごし、優秀な頭脳と好奇心 を持って世界を見ている。容姿も良い。弱点は誰に対しても客観的な視点をもちすぎている。
浅井光……夏が目指して借りる本の裏表紙にいつも書かれている名前
桜庭克哉……硬式テニス部。夏の一学年下後輩。頭がよく人に好かれる。見た目は子供っぽいが中身は大人。夏と克哉は似た者同士とお互い認め合っている。
志田啓一……硬式テニス部の卒業した一つ上の先輩。
<あらすじ>
あたしは主人公にはなれないー。関根夏はそう思っていた。だが半年前の卒業式、夏はテニス部の先輩・志田啓一から秘密の使命を授かった。高校で代々語り継がれる(サヨコ)伝説に関わる使命を……。
「サヨコの鍵」をめぐって図書室で繰り広げられる、恋模様とちょっとしたミステリーをまじえた高校生活のできごと。
夏はこの学校の図書室が好きだ。重い気の引き戸を開けて入った瞬間の解放感。特別教室の特有の広さ、天井の高さ。ここは海に似ている。
その図書室で、夏は半年前に卒業した志田啓一の読んでいた本を探してみると、本の裏表紙の貸出人の名前には志田啓一とともにいつも浅井光の名前があった。
学園祭が終わり全校に弛緩した空気が流れる晩秋のある日、夏は図書室で本の拾い読みをするのにも飽きて窓辺に歩いていくとセーラー服を着た人影が視界の隅をよぎる。すると、克哉に声をかけられる。克哉にその人影のことを尋ねるとあっさりと「サヨコだよ」という答えが返ってきた。
この学校にはサヨコ伝説があり、現在「サヨコの鍵」というものが今も引き継がれているという。それは卒業式に次の誰かに渡すことになっていて、それを志田啓一が持っていたんじゃないかと克哉は言う。
ある日、夏は克哉がクラスでコックリさんみたいなことをする時、「鍵は誰が持っているか」聞いてみると言ったのは今日だったということを急に思い出す。夏はその質問を止めさせなければと、図書室にたどりつく。するとそこには男子生徒と女子生徒が一人ずつ、窓辺のテーブルに向かい合って座っているだけだった……。
<感想>
恩田陸さんは大好きな作家の一人ですが、図書室の海は題名からして心惹かれるものでした。
再読してなぜこの小説が好きだったのかを確認できました。
私は小学生、中学生のころは少女漫画が大好きで週間マーガレッット・りぼん・少女コミック・花とゆめ・ぶーけを読んでいました。恩田陸さんは年代も私と同じで、これらも読破していたと思われます。恩田陸さんの作品には少女漫画からヒントを得たのではないかと思う作品もいくつかあります。この「図書室の海」もあらすじとしては少女漫画的ですが、図書室を舞台に繰り広げられるものがたりと図書室の情景描写が好きで、懐かしさと共に楽しめました。
好きな本に囲まれた部屋は私の憧れです。
次にご紹介するのは、おとなのための絵本です。
世界中の本好きに贈る、
本への愛にみちたファンタジックで優しく切ない物語。
モリス・レスモアとふっしぎな空とぶ絵本
ウィリアムジョイス作・絵
おびかゆうこ訳
絵本に先がけて制作された映画は、2012年アカデミー賞、短編アニメーションを受賞。
<あらすじ>
モリスにとって、この世でいちばん大切なものは、本だった。
モリスは、ものがたりを読むのすきで、自分でも本を書いていた。
あさおきると、自分の本ををひらき
うれしかったこと、かなしかったこと、
みたこと、きいたこと、そしてねがっていることを
ひとつのこらず書くことにしていた。
本をこよなく愛する青年モリス。
ある朝、はげしい風がふきあれ、
町もモリスも、
みんなふきとばされてしまった。
すべてをうしなったモリスが
ふしぎな空とぶ本に導かれて
たどりついたのは
本たちのすむ館だった・・・。
ある日モリスは、とうとう自分の本を書き終えた。
そして、ほっとしたように
ためいきをつくと、
さみしそうに、つぶやいた。
「そろそろ、たびたつ時がきたようだ」
モリスの本が部屋に加わり
女の子がやってきます。
やさしい絵とモリスの本に対する愛があふれた絵本は本好きな読者の気持ちにそっと寄り添ってくれるはずです。
しずかにほほえみ、本たちにいった。
「みんなは、いつまでもずっと、ぼくのこころのなかにいるからね。」